研究者紹介
Researcher
生物資源学研究科
資源循環学専攻
瀬川 あすかSegawa Asuka

- 研究テーマResearch theme
- クロマツ海岸林における外生菌根菌の分解能の解明
- 研究内容の概要Overview
- 2011年に発生した東日本大震災では,東北地方から関東地方にかけてクロマツ海岸林が壊滅的な被害を受けました.沿岸部の再生のため,さまざまな土壌を用いた盛土が沿岸部に造成され,そこにクロマツ実生が植栽されました.植栽から10年以上経過した現在,海岸林の防災林としての機能が注目される一方で,盛土の一部では植栽されたクロマツ実生の成長不良が報告され,将来にわたる日本の原風景を形作る健全なクロマツ海岸林の維持管理が喫緊の問題となっています.被災地では,地上部を支えるクロマツの太い根に関する研究はありますが,養分獲得を担う菌根菌の情報はありません.私は,クロマツ海岸林において,クロマツと共生する菌根菌の分解能を解明することで,地上部のクロマツと地下部の菌根菌における養分獲得の仕組みを統合し,森林生態系の養分循環の理解を深めたいと考えています.
図1. 東日本大震災で壊滅したクロマツ海岸林およびさまざまな土壌を用いて造成された盛土上に植栽されたクロマツ実生
図2. クロマツの細い根における外生菌根菌の(a)定着がない非菌根と(b)定着のある菌根,(c)菌根の断面図と根外菌糸(バーはすべて1 mm)
- 研究成果をどのように社会に役立てるか
(還元の構想)Giving back to society - 菌根菌の多様性や群集構造に関する知見は,DNA解析技術の進展によって世界的に解明されつつありますが,そのはたらきに関する情報は現代においても圧倒的に不足しています. 本研究は,クロマツ地上部の成長を地下部の菌根共生の情報と統合させて,健全な海岸林の造成に関する知見を提供します.本研究の成果は,高ストレス環境下で成長するクロマツの継続性に貢献するだけでなく,将来的には,現在憂慮されている南海トラフ地震に続く津波被害を軽減するための適切な防災林の造成への貢献も期待できると考えています.