研究者紹介

Researcher

生物資源学研究科
共生環境学専攻

範 海倫FAN HAILUN

範 海倫
研究テーマResearch theme
野菜の非食部を用いた生分解可能なバイオボードの開発研究
Development of biodegradable biomass board using non-edible parts of vegetables
研究内容の概要Overview
建築や家具などの分野に使用されている木質ボードには、接着剤が使われており、ホルムアルデヒドやその他の人体に影響を及ぼす有害物質が含まれているので、人間や環境にやさしい代替材料の開発が注目されている。本研究では、植物バイオマスを用いて生分解可能なバイオマスマテリアルを開発し、市販の木質ボードの代替品として建築や家具などの分野への応用を目指す。博士前期課程では、野菜の非食部であるナスの茎葉を用いて生分解可能なバイオボードを作製し、その物理的特性と強度特性を調べた。この研究を通じて生分解可能なバイオボードの作製プロセス(図1)の妥当性を確認し、木質ボードと同等の強度を持つバイオボードを作製することができた。
従来の木質系ボードは、一般的にホルムアルデヒドなどのVOCsを含む尿素樹脂を接着剤として使用しており、2021年の世界生産量は約4億3800万立方メートルで、主に建物資材、家具、包装材などの用途に使用されている。しかし、健康への関心の高まりと需要の増加に伴い、接着剤を使わないバイオボードの採用が目標になりつつある。食料生産過程において藁や野菜の非食部等が大量に発生しており、その70%は焼却処分されている。焼却によってもたらされた環境問題が発生するのみならず、再生可能なバイオマス資源の無駄でもある。FAOの統計によると、2019年の世界のナスの生産量は9100万トンを超えている。ナス収穫後の不要な茎葉は廃棄処分されている。ナスの茎葉は植物バイオマスであり、セルロースが30%前後含まれている。現在までナスの茎葉を利用する研究はあまり見当たらない。本研究では、ナスの茎葉を原料として、本研究で考案した作製プロセスを用いてバイオボードの作製を試みた。また、作成したバイオボードの物理的特性および強度特性を測定し、評価を行った。
湿式作製法を用いてバイオボードを成型する。これは水の中でセルロース繊維間の水素結合を利用して繊維の再結合が実現され、バイオボードになる。図1に示すように、バイオボードの作製プロセスは、乾燥したナス茎葉の細断、浸漬、解繊、成型である。本研究では、バイオボードの質量を約20g、厚み約2mmを目途に作製した。成型時の負荷圧力の影響を調べるために、負荷圧力を2.0MPaから8.0MPaまで1.5MPaの間隔で変化させた。加熱温度を110℃と一定とした。それぞれの作製条件においてバイオボード(図2)を5枚作製した。いずれの作製条件下においてもバイオボードを作製することができた

図1 バイオボードの作製プロセス

図2 作製したバイオボード

研究成果をどのように社会に役立てるか
(還元の構想)Giving back to society
建築や家具に広く使用されている木質ボードには、接着剤やホルムアルデヒドなど人体に有害な物質が含まれているため、人体や環境に優しい代替材料の開発が急務となっている。このような背景から、バイオボードは生分解性の代替建材として、大きな応用の可能性を示している。世界の未利用植物バイオマス資源である藁や野菜の非食部は年間約50億トンが発生している。これらを高付加価値のバイオボードに転換することは、森林資源を保全するだけでなく、農業廃棄物の効果的な処理と資源のリサイクルにも貢献できる。以下は、私の研究成果をさらに社会に還元するための具体的なアイデアである。
1)生分解性建材の普及:建設業界、特に農村部や農業集約地域における農家住宅の建設などのプロジェクトにおいて、バイオボードの利用を促進する。これは、実証プロジェクト、技術研修、政策支援を通じて達成できる。
2)農業廃棄物の資源利用:農業廃棄物、特に藁の資源ポテンシャルを重視し、高度な技術によって高品質のバイオボードに転換する。これは、農業廃棄物の処理問題を解決し、従来の木材の需要を減らすだけでなく、農家にさらなる経済的利益をもたらす。
3)政策提言:政府と協力し、生分解性建材の使用に関する政策を提言・支援する。これには、建設業界がより環境に優しい材料を採用することを奨励するための税制優遇措置、補助金、報奨金制度などが考えられる。
4)国際協力:農業廃棄物の資源利用と生分解性建材の応用を共同で推進するパートナーを国際的に探す。これは、国際的な学術セミナーや共同研究プロジェクトなどを通じて促進することができる。
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