研究者紹介
Researcher
生物資源学研究科
生物資源学研究科
股村 真也Matamura Masaya
- 研究テーマResearch theme
- 「肥育牛のデンプン消化率推定に関する研究」
本研究では,黒毛和種の肥育牛を対象にデンプン消化率を農場で簡易に推定する方法を確立するため,牛糞に対し近赤外分光法や画像解析によって簡易にデンプン消化率を推定するシステムを作成し,デンプン消化率の実態調査をすることを目的とした。
- 研究内容の概要Overview
- 家畜は畜産物による人間への栄養供給として利用され,世界的な需要が拡大している。しかし,食肉生産は増加しているものの,温室効果ガス排出も増加しており,気候変動への影響が懸念されている。
デンプンは,食料や飼料,エネルギーとしても利用できる有用な資源である。そして,デンプン含量が高いトウモロコシは肥育牛にとって主要なエネルギー供給源であり,肥育牛に与える配合飼料に占めるトウモロコシの割合は4~8割を占めている。しかし,日本の穀類の飼料自給率は13%と低迷しており,飼料用の穀類の多くを輸入に依存している。近年,穀類の飼料価格は増加傾向となっており,貴重な飼料を十分に活用し,飼料効率を高めることが生産現場に対しての1つのサポートとなる。
以上の研究背景を受けて,本研究では持続可能な畜産における飼料資源の利用のために,肥育牛の主な栄養源であるデンプンに注目した。一般にデンプンはウシの消化管内でほとんど消化・吸収していると考えられているが,黒毛和種の肥育牛の農場で行った予備調査で,糞中に未消化の穀類が散見された。このことは,肥育牛の一部では十分にデンプンを消化していないことを示唆するが,消化率の定量的な把握には至っていない。また,多くの農場での調査を可能にするためには,短時間で簡易にデンプン消化率を推定できる方法を確立する必要がある。
そこで本研究では,黒毛和種の肥育牛を対象にデンプン消化率を農場で簡易に推定する方法を確立するため,牛糞に対し近赤外分光法や画像解析技術を活用することによって簡易にデンプン消化率を推定するシステムを作成し,肥育牛農家におけるデンプン消化率の実態調査をすることを目的とした。
- 研究成果をどのように社会に役立てるか
(還元の構想)Giving back to society - 【効率的なデンプン資源の利用と肥育効率の向上】
現在,デンプンの効率的な利用に関する情報は限られている。本研究によって,配合飼料中のデンプン量とその消化率に関する情報を提供することで,農家は飼料設計や給餌方法を最適化し,肥育牛の生産効率を向上させることが期待される。