三重大学博士課程学生支援プロジェクト

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研究者紹介

SPRING・フェローシップ制度研究者紹介

Researcher

生物資源学研究科
資源循環学専攻

陶 相宇TAO XIANGYU

陶 相宇
研究テーマResearch theme
木粉押出成形品の耐水化と実用性向上に関する研究
研究内容の概要Overview
 現在,幅広く使われている生分解性のない石油系プラスチックは,陸地・海洋に関わらず,深刻な環境問題を引き起こしています。これらのプラスチックは自然に分解しないため,陸上に堆積したり(図1),海洋に浮遊している間に,紫外線や波にさらされて劣化,破砕,細分化して,マイクロプラスチックと呼ばれる微粒子になります。これらマイクロプラスチックが食物連鎖を通じて,魚介類を食べる人間の体内に有害な化学物質を蓄積する可能性も懸念されています。そのため,当研究室ではセルロース由来の増粘剤を用いたバイオマスの湿式押出成形に取り組んできました1)。増粘剤は水溶性であるため,成形品も水に弱く,高温多湿環境には使用できません。したがって,成形品の用途を広げるために,先行研究2)では,グリーン架橋剤を添加することによって木粉押出成形品の耐水性を高めることに成功しました。しかし,成形品の耐水化メカニズムや強度については未だ解明されておらず,成形品の実用化には制限があります。そこで,耐水性成形品の耐水化メカニズム,構造,強度,安全性を明らかにすることにより,バイオマス成形品を実用化させることを目的に研究を行います(図2)。
 この目的を達成するため,まず所定の組成比の耐水化メカニズムを探索し,構造の分析手法を確立します。次いで,異なる耐水化処理条件下で所定組成比の成形品の強度変化を調査し,また異なる組成比の成形品と比較することによって,強度変化とその原因を分析します。これらの結果と原料のコストを踏まえて最適な組成比を決定します。最後に,汎用品との強度比較,安全性の検討を行い,実用範囲について結論付けます。

 参考文献
 1) 松岡拓磨,野中 寛,紙パ技協誌,74(5),508-515 (2020)
 2) Tao, X., Nonaka, H., BioResources, 16(2), 2314-2325 (2021)

図1 栗真町屋町海岸のプラスチックゴミの実態調査(2022.3撮影)

図2 研究内容の概要

研究成果をどのように社会に役立てるか
(還元の構想)Giving back to society
 本研究の完成は,バイオマスの加工利用について,新しい道を提案します。また,この技術によって生まれる成形品は,プラスチック製品の一部分を代替することが期待されており,脱炭素社会実現に寄与します。
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