研究者紹介
Researcher
工学研究科
材料科学専攻
安藤 陸Ando Riku

- 研究テーマResearch theme
- 窒化物低しきい値ショットキーバリアダイオードに関する研究
- 研究内容の概要Overview
-
近年、次世代半導体材料として、GaNをはじめとする窒化物半導体が注目されており、低リーク
電流な特性も有することから、エネルギーハーベスティング等の小電力応用向けデバイスの検討も行われている。特に、ショットキーバリアダイオード(SBD)は高周波特性に優れるため、この用途に適していると考えられる。これまでの研究で我々は、図1に示すように小電力応用に適するしきい値電圧(Vth)の低いSBD開発に向けた研究を行っており、歴史的に初歩的な素子構造である針接触型Ge SBDのVthが一般的な構造の接合型 SBDよりも低いことを発見し、これを説明可能なモデルを提案してきた[1, 2]。本研究では、このGeでの知見を低リークな特性を有する窒化物結晶のSBDに展開し、前記モデルの材料によらない普遍性を検証する。さらに、デバイス作製プロセスでナノインプリント等の技術を活用することでプロセス技術を確立し、小電力応用に適した窒化物半SBD実現と社会実装の両立を目指す。
[1] R. Ando et al., Jpn. J. Appl. Phys. 63, 020908 (2024).
[2] R. Ando et al., APL Elec. Dev. 1, 036101 (2025).

図1 低Vth特性を実現する針接触型Ge SBDのI-V特性とデバイス構造
- 研究成果をどのように社会に役立てるか
(還元の構想)Giving back to society - これまでの研究で接合型と針接触型SBDの素子特性が大きく異なり、特にしきい値電圧の制御に有効であることを明らかにしてきた。しかしながら、針接触というデバイス構造は現在流通している半導体デバイスの構造と大きく異なり、パッケージングや他の半導体デバイスとのモジュール化に課題を残している。そこで本研究では、ナノインプリントや電子線描画等の一般的なプロセス技術を活用し、針接触型と同等の特性を維持しつつ、社会実装可能なデバイス構造の実現を目指す。これにより、小電力応用に適した低Vth SBDの開発を通じてエネルギー利用の高効率化を実現し、カーボンニュートラル社会の実現や地球温暖化対策に資することが期待される。また、得られた研究成果については、学術論文や国際会議で積極的に発表し、学術界のみならず産業界への技術移転を推進することで、社会への還元を図る。