研究者紹介
Researcher
地域イノベーション学研究科
地域イノベーション学専攻
国 童欣GUO TONGXIN
- 研究テーマResearch theme
- 農産物輸出におけるマーケティング戦略
- 研究内容の概要Overview
- 農産品輸出という動きは地域・産地、国民全体、さらに就農者に対してさまざまなメリットがあるが、本質は売上や利益を創出していく手段である。なので、海外に輸出できれば、直ちに効果を享受できるわけではなく、効果を上げるための生産者団体としての輸出前及び輸出後の努力も求められる。
一方、多くの生産者の意識は製品の質、サービス・販売を重視するだけで売れるという層に止まっている。しかしながら、メリットを享受しようとすれば、従来のサービスや販売を重視したマーケティングだけでなく、地域特有の自然、歴史、社会、風土、文化などの地域内の象徴的な要素を含めた生産物と地域とのつながりを価値の基盤とし、その上、消費者ニーズに適合することによりブランド化を目指すことから、新たなマーケティング展開が必要となると考えられる。
こうした中で日本産農産物・食品輸出に関する研究は、2000年代以降活発に行われている。これらの既存研究をテーマ毎に大別すると、a)国内産地流通主体(系統農協や輸出推進協議会、企業等)を対象とした輸出システムの解明、b)輸出相手国・地域の輸出関連(植物防疫)制度や社会的慣習を整理し、日本の輸出主体に対する作業負担の現状と課題の検討、c)輸出相手国・地域において店頭調査及び消費者アンケート調査から現地の消費者ニーズの解明である。
これらの内容を整理すると、第1に輸出システムの戦略を解明する研究があるが、それをいかに構築するかに関する研究が不十分という点、第2に輸出先市場の消費者ニーズを明らかにするにもかかわらず、食品としての農産品は、他の製造業と比べ、質の識別難度が高い、嗜好の地域性の高いなどから、いかに農産品の強みを生かしながら輸出先の消費者に受容させるかに関する研究が必要。第3に、産地状況、市場状況、消費者ニーズに関する研究が充実しているにもかかわらず、輸出主体の動機を出発点として議論する研究が少ない。
そこで、本研究の目的は、日本国内で売れにくい農産品の海外輸出動向と戦略に焦点を当て、輸出先市場で受容される原因を解明しよう。
- 研究成果をどのように社会に役立てるか
(還元の構想)Giving back to society - 学術的な意義:製造業における輸出戦略に関する研究が充実しているにもかかわらず、農産品に関するマーケティング戦略が乏しいというような実態がある。本研究は、日本の農産品を注目し、既存研究を整理する上で、農業の経営戦略という体系を充実させるために、研究を行う。
現実的な意義:本研究は日本国内市場で売れにくい農産品を対象に、産地段階の合意形成から輸出までの産業システム構成のプロセス、輸出段階における取引実態と海外市場の消費者ニーズに合わせて戦略の調整方向を解明し、それらの特質と問題点を把握した上で、日本で売れにくい農産品の海外輸出戦略の提言を意図したものである。