研究者紹介
Researcher
生物資源学研究科
資源循環学専攻
齊藤 勇人Saito Hayato
- 研究テーマResearch theme
- 樹木は数十年から数百年もの間生き続けることのできる生物です。それは進化の過程で獲得した様々な機能を持って成り立っています。樹木を覆っている樹皮もその機能の一つです。我々が利用する木材は、外に放置すると3年と持たず微生物に分解され劣化してしまいます。しかし、樹木の木材の部分が腐ることなく数十年以上自然界で生きているのは、樹皮によって保護されているためでもあります。樹皮が突破され病原菌や害虫が樹体内に侵入すると樹木はたちまち枯れてしまいます。そして、樹皮は樹木を見てわかるように樹種ごとに非常に多様な形態をしています。このような樹木が生きていくにあたって重要な樹皮について、その機能の解明や樹皮を構成する化学成分に着目して研究を行っております。
- 研究内容の概要Overview
- 日本で見られる10種の野生種のサクラの一つであるヤマザクラの樹皮を対象に研究を行っています。図に示したように、サクラ樹皮の物理的な特性、解剖学的な特性、さらに、化学成分の特性に着目して、サクラ樹皮がなぜ1.5倍も延伸することができる素材であるのかを明らかにするために研究を行っております。
- 研究成果をどのように社会に役立てるか
(還元の構想)Giving back to society - 持続可能な社会の実現に向けて、天然材料で持続可能な木材の利用は注目されています。木材の特徴は軽くて強いことが知られており、建築材料や家具などで広く用いられてきました。そして、木材細胞壁の主成分であるセルロースは一般的に硬くてもろい物質を構成することで知られています。しかし、本研究で実験に用いたサクラの樹皮はセルロース材料でありながら、1.5倍程度の伸びをしめし、高い靭性を持つ材料であることがわかりました。セルロースの欠点であるもろさをカバーしうる素材の作製も樹皮の特性を活かせば可能であるかもしれません。プラスチックフィルムのような素材をセルロースから作ることができれば木材利用の幅をさらに増やすことに貢献できます。